お知らせ

フリースペースはいつまでもつながっていけるところにしていきたい

日比 晴久

社会福祉法人幸寿会
特別養護老人ホームカーサ月の輪 施設長 (2019年時点)

2015年3月より大津市の特別養護老人ホームカーサ月の輪で「フリースペースカーサ」を開設。さびしさやしんどさを抱えている子どもたちが安心して信頼できる大人とのびのび過ごせる夜の居場所を提供しています。

フリースペースの活動も3年と10か月が経ち、県内11か所まで広がりました(2019年1月現在)が、その後なかなか増えていません。やはりこの活動の難しさ、ハードルの高さがあるんです。

フリースペースの活動は、学校に行きにくくなっている子どもたちを、週に1度、デイサービス終了後に施設の送迎車で迎えに行きまして、一緒にご飯を食べて、一緒にお風呂に入って、遊んだり、勉強したりして過ごします。1人の子どもが1人の大人を独占できるように、施設職員や学生ボランティア、ご近所の方等、複数の大人がマンツーマンで関わります。

私たちの運営するフリースペースカーサが、県内で最初に始まって、回数で言うと160回以上実施をしています。今まで来た子どもは合計で4世帯11人、現在来ているのは2世帯3人です。

今回、「ひたすらなるつながり」という言葉を聞いて、私が最近感じていることをお話しします。うちに来ている子どもたちの中で、一番大変だった家庭の子どもたちが通っていた時期が2年ほどありました。結局、児童養護施設に行くことになって、いったん関係は切れてしまったんです。ところが昨年の秋頃に突如、長女がカーサにやってきまして、まあ、フリースペースの日だとわかって来たんですけど、それからは、だいたい月2回ぐらいはうちに来ているんですね。

本当にいっとき大変な状況で、家庭でもうまくいかない、学校にもなかなか行けていない中で、来るたびに、「もう、死にたい」とか「自分なんて要らない存在だ」とか言っていました。帰りに送って行くとき、踏切を渡って帰るんですけど、「どんな死に方やったら楽かな」みたいなことをよく言っていたんで、「絶対におまえは死ぬな」というメッセージを送るために、「20歳になったら飲みに行こう」とひたすら伝えていたんです。

こうやってまた来てくれるようになって、今何の話をするかと言ったら、バイトのこととか、進学のこととか、2年前は死にたい言うてた子が結婚するとか言ってくれるんで、すごくうれしいんです。 なかなか施設の人たちには本音をしゃべれない、親ともなかなか会えないという状況なので、うちに来ていろいろなことをしゃべってくれて、こうやってつながっていることがすごく大事だなというのを感じています。

「ひたすらなる」というのは、フリースペースに来てくれた時間、いっとき支援したらいいだけじゃなくて、いったん知り合えて関わった以上はずっと続けていかなきゃいけない。私はこの「ひたすらなるつながり」を勝手にそのように解釈していまして、フリースペースはいつまでもつながっていけるところにしていきたいなと。というか、していかなきゃいけないなと思っています。

本当に多くの子どもたちや家庭が、フリースペースのような場を必要としている状況にあると思いますので、受け皿を増やしていくために、もっともっと一緒に活動できる仲間を増やしていきたいと考えています。

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